松島泰勝『琉球独立宣言-実現可能な五つの方法』講談社文庫、2015年9月15日、278頁、690円+税、ISBN978-4-06-293196-0

 本書は、「文庫書下ろし」であるが、突然思いついて書いたものではない。著者の長年の研究と体験にもとづいた本書出版前後に出版した著者、松島泰勝のつぎの編著書をまとめるように編まれている:松島泰勝『琉球独立論』(バジリコ、2014年)、松島泰勝編著『島嶼経済とコモンズ』(晃洋書房、2015年)、松島泰勝『琉球独立への経済学』(法律文化社、2016年)など。引き続き、最近は明石書店から『帝国の島―琉球・尖閣に対する植民地主義と闘う』(2020年)、『歩く・知る・対話する琉球学―歴史・社会・文化を体験しよう』(2021年)などを出版している。

 帯には、池澤夏樹のつぎのような推薦文が載っている。「居酒屋から論壇へ、独立論のフィールドが変わった。この人は本気だ。ヤマトンチュにとっては、国家とは何かを考えるよい機会である」。

 本書は、つぎのような「疑問にたいして具体的に、分かりやすく答えよう」としている。「米軍が占領軍のように未だに存在する日本は、本当に独立していると言えるのか?」「日本人は平和な生活をおくり、基本的人権を享受しているのか?」「政府や特定の団体から圧力やヘイトスピーチを受けることなく、自由に学問し、自分の意見を主張し、議論をすることができるのか?」「日本で生まれ育ち、この国にいて本当によかったと心から喜べるのか?」「琉球の人々が、なぜ独立を叫ぶようになったのだろうか?」「教科書で教える琉球の歴史とは違う歴史があるのか?」「おだやかな風土や人柄の琉球や琉球人から、なぜ独立という熱い言葉がでてくるのか?」「そもそも独立するって何なのか?」「独立はキケンな行為ではないのか?」「琉球独立は実現可能なものなのか?」「琉球独立は日本とどのような関係があるのか?」「国として独立するために何をすればいいのか?」「琉球だけでなく日本にとっても独立は重要ではないのか?」。

 本書は、はじめに、全5章、おわりに、などからなる。「はじめに」は、つぎのことばで終わっている。「この本を読んで、アナタ自身の国の過去、今、未来の姿を考え、自分はこの国のなかで幸せに生きているのか、もし不幸ならば自分は何をすべきなのかなどを考えて頂けたら幸いです」。そのために、著者は事例として「琉球」をとりあげ、それぞれの章で「もう独立しかない!」「どのように独立するのか」「そもそも琉球の歴史とは」「独立したらどうなる?」を議論し、第5章「琉球独立宣言」にもっていっている。

 本書副題の「実現可能な五つの方法」は、つぎの5つである。「琉球人の独立賛成派を増やす」「日本で独立賛成派を増やす」「国際世論を味方にする」「国連、国際法に従って進める」「日米両政府に辺野古新基地建設を断念させる」。

 2013年に琉球民族独立総合研究学会を立ち上げ、独立の準備をすすめているが、それから10年近くが経って、具体的な動きはみられない。だが、著者のいう「米軍が占領軍のように未だに存在する日本は、本当に独立していると言えるのか?」という疑問が、いま現実に起こっている。ロシアのウクライナ侵攻にたいして、日本政府は独立国として独自の安全保障を語っていない。欧米諸国に追随することしかしていない。独立国として考え、行動しなければ、ウクライナのように国際世論を味方につけることはできない。


評者、早瀬晋三の最近の著書・編著書
早瀬晋三『すれ違う歴史認識-戦争で歪められた歴史を糺す試み』人文書院、2022年1月20日、412頁、5800円+税、ISBN978-4-409-51091-9
早瀬晋三『東南アジアのスポーツ・ナショナリズム-SEAP GAMES/SEA GAMES 1959-2019年』めこん、2020年、383頁、4000円+税、ISBN978-4-8396-0322-9
早瀬晋三『グローバル化する靖国問題-東南アジアからの問い』岩波現代全書、2018年、224+22頁、2200円+税、ISBN978-4-00-029213-9
早瀬晋三編『復刻版 南洋協会発行雑誌-『会報』・『南洋協会々報』・『南洋協会雑誌』・『南洋』-』(龍溪書舎、2021年4月~ )全30巻+『南洋協会発行雑誌(『会報』・『南洋協会々報』・『南洋協会雑誌』・『南洋』1915~44年) 解説・総目録・索引(執筆者・人名・地名・事項)』(龍溪書舎、2018年1月)全2巻。
早瀬晋三編『復刻版 ボルネオ新聞』龍渓書舎、2018~19年、全13巻+『復刻版 ボルネオ新聞(1942~45年) 解題・総目録・索引(人名・地名・事項)』龍渓書舎、2019年、471頁。