永井史男・水島治郎・品田裕編著『政治学入門』ミネルヴァ書房、2019年5月30日、364頁、3500円+税、ISBN978-4-623-08568-2
本書の内容は、表紙見返しに、つぎのように紹介されている。「政治はどのように捉えればいいのか。本書では、初めて政治学に触れる大学生が、入学から卒業に至るまでに様々な「政治」を経験するというストーリーとともに、政治学の世界を分かりやすく紹介する。また、「合理的個人」という視座では説明がつかない政治の現象も視野に収めた、包括的な内容を目指す。大学新入生はもちろん、どの学部の学生にとっても、最初に紐解くべき入門書であり、社会人になってからも役立つ道しるべ」。
本書が出版された理由のひとつは、「学問へのファーストステップ①」として、「しっかり書かれた教科書を作りたい」、というのはすぐわかる。もうひとつの理由は、「政治学入門を市民教育の柱として明確に位置づけたいということである」。そして、つぎのように説明している。「「市民教育の柱」という趣旨は、政治学を専門的に学ぶ政治学科などの学生よりも、文学、経済学、工学はじめさまざまな学問分野を学ぶみなさんにこそ、この本を読んでいただきたいという意味である」。「大学を卒業した後にこそ、市民として社会に責任を持ったり、あるいは社会福祉の担い手や受け手になったりする。その時にこそ必要な政治や社会の基本的考え方を伝えておきたい、という発想である。そこで本書では、従来の入門的教科書では正面からあまり取り上げられることのない「市民社会」論や「福祉国家」論、さらには現代政治学でやや敬遠される傾向のある「民主主義」論にそれぞれ1章ずつ割いた」。
換言すれば、「はしがき」にある「政治はたいへん身近なものである」ということをわかってもらいたいということだろう。そのため、各章の冒頭に、新入生のミネオ君が「Short Story」で登場することになったのだろう。もうひとり女子学生が登場すると、「政治は男のもの」というイメージ払拭にも貢献したかもしれない。
本書は、政治学の入門書であるが、つぎの2つの研究動向の影響を大きく受けているという。「1つは、近年の政治学入門書の多くが「方法論的」個人主義に基づく「合理的」個人を前提に政治現象を説明するのに対して、本書はそのような分析視座を共有しつつも、個人の行動が合理性のみによっては説明がつかない場合も視野に収めている点です。政治的営みを個人の「合理的」行動から説明しようとするのは「方法論的」個人主義の典型例です。あるいは、社会や階級、利益団体といったグループを自明の前提として1つの単位で捉えるのではなく、あくまで個人の集合体として理解しようとする立場です」。
「もう1つは、理論と実証のバランスに対する目配りです」。「政治学のような社会科学でも、問いと仮説を立て、適切な理論を説明し、実証を行うという研究の作法が重要になりました」。「本書の執筆者は、ちょうど日本の政治学が大きく変わり始めた後で、大学で政治学や国際関係論を修めた人たちが中心です。本書もまた、こうした理論と実証の態度を大切にしたいと思います」。
本書は、序章、4部全12章からなる。序章の最後で、つぎのようにまとめている。「「第Ⅰ部 政治は身近なところから」では、政治を身近なところから感じてもらうため、政治を知るメディアやツール、選挙における投票行動、政治家の生活について焦点を合わせます。続く「第Ⅱ部 政治はみんなで決めるもの?」では、やや遠いところで「政治」がどのように決められているのかを、議会や政策過程を通して考えます」。「「第Ⅲ部 『まち』と地域で支え合う政治」では、再び身近な政治に立ち戻りますが、「方法論的」個人主義では議論しづらい、市民社会論や地方自治、福祉国家など、目線を地域や社会に移して政治を考えたいと思います」。「最後の「第Ⅳ部 世界と関わり合う政治」では、これまでの議論が一国内で完結していたのに対して、視野をグローバルに広げています。政治学の分野で言えば、比較政治学や国際政治学に属する分野です」。
15回の講義を想定して、序章と12章で13回分と試験、残り1回を担当教員に自由に使ってもらおうということだろうか。執筆者も12人で、全学共通科目の教科書として、各大学で使ってもらえば、採算もとれるということだろう。それでも3500円+税になるのか。高くなったのは「近年教科書は薄く短くなる傾向」に反した結果だろうが、「薄く短く」なるとわけがわからなくなり、長いほうがわかりやすい。わかりやすい本が高くなるというのはなっとくがいかないが、「逆向き」が功を奏してわかりやすくなっている。とくに第Ⅰ部はわかりやすいが、途中から「よくわからない」ということにならなければよいが・・・。
本書が出版された理由のひとつは、「学問へのファーストステップ①」として、「しっかり書かれた教科書を作りたい」、というのはすぐわかる。もうひとつの理由は、「政治学入門を市民教育の柱として明確に位置づけたいということである」。そして、つぎのように説明している。「「市民教育の柱」という趣旨は、政治学を専門的に学ぶ政治学科などの学生よりも、文学、経済学、工学はじめさまざまな学問分野を学ぶみなさんにこそ、この本を読んでいただきたいという意味である」。「大学を卒業した後にこそ、市民として社会に責任を持ったり、あるいは社会福祉の担い手や受け手になったりする。その時にこそ必要な政治や社会の基本的考え方を伝えておきたい、という発想である。そこで本書では、従来の入門的教科書では正面からあまり取り上げられることのない「市民社会」論や「福祉国家」論、さらには現代政治学でやや敬遠される傾向のある「民主主義」論にそれぞれ1章ずつ割いた」。
換言すれば、「はしがき」にある「政治はたいへん身近なものである」ということをわかってもらいたいということだろう。そのため、各章の冒頭に、新入生のミネオ君が「Short Story」で登場することになったのだろう。もうひとり女子学生が登場すると、「政治は男のもの」というイメージ払拭にも貢献したかもしれない。
本書は、政治学の入門書であるが、つぎの2つの研究動向の影響を大きく受けているという。「1つは、近年の政治学入門書の多くが「方法論的」個人主義に基づく「合理的」個人を前提に政治現象を説明するのに対して、本書はそのような分析視座を共有しつつも、個人の行動が合理性のみによっては説明がつかない場合も視野に収めている点です。政治的営みを個人の「合理的」行動から説明しようとするのは「方法論的」個人主義の典型例です。あるいは、社会や階級、利益団体といったグループを自明の前提として1つの単位で捉えるのではなく、あくまで個人の集合体として理解しようとする立場です」。
「もう1つは、理論と実証のバランスに対する目配りです」。「政治学のような社会科学でも、問いと仮説を立て、適切な理論を説明し、実証を行うという研究の作法が重要になりました」。「本書の執筆者は、ちょうど日本の政治学が大きく変わり始めた後で、大学で政治学や国際関係論を修めた人たちが中心です。本書もまた、こうした理論と実証の態度を大切にしたいと思います」。
本書は、序章、4部全12章からなる。序章の最後で、つぎのようにまとめている。「「第Ⅰ部 政治は身近なところから」では、政治を身近なところから感じてもらうため、政治を知るメディアやツール、選挙における投票行動、政治家の生活について焦点を合わせます。続く「第Ⅱ部 政治はみんなで決めるもの?」では、やや遠いところで「政治」がどのように決められているのかを、議会や政策過程を通して考えます」。「「第Ⅲ部 『まち』と地域で支え合う政治」では、再び身近な政治に立ち戻りますが、「方法論的」個人主義では議論しづらい、市民社会論や地方自治、福祉国家など、目線を地域や社会に移して政治を考えたいと思います」。「最後の「第Ⅳ部 世界と関わり合う政治」では、これまでの議論が一国内で完結していたのに対して、視野をグローバルに広げています。政治学の分野で言えば、比較政治学や国際政治学に属する分野です」。
15回の講義を想定して、序章と12章で13回分と試験、残り1回を担当教員に自由に使ってもらおうということだろうか。執筆者も12人で、全学共通科目の教科書として、各大学で使ってもらえば、採算もとれるということだろう。それでも3500円+税になるのか。高くなったのは「近年教科書は薄く短くなる傾向」に反した結果だろうが、「薄く短く」なるとわけがわからなくなり、長いほうがわかりやすい。わかりやすい本が高くなるというのはなっとくがいかないが、「逆向き」が功を奏してわかりやすくなっている。とくに第Ⅰ部はわかりやすいが、途中から「よくわからない」ということにならなければよいが・・・。
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