山下清海『華僑・華人を知るための52章』明石書店、2023年4月5日、322頁、2000円+税、ISBN978-4-7503-5561-0
いい「終活」をしている、といったら失礼だろうか。『横浜中華街』(筑摩書房、2021年)、『世界のチャイナタウンの形成と変容』(明石書店、2019年)、『新・中華街-世界各地で<華人社会>は変貌する』(講談社、2016年)、『世界と日本の移民エスニック集団とホスト社会』(編著、明石書店、2016年)、『改革開放後の中国僑郷』(編著、明石書店、2014年)、『池袋チャイナタウン』(洋泉社、2010年)などの著作を出してきた著者が、その知識と情報をフルに活かしてまとめたのが、本書だろう。索引を付ければ、事典になる。
「「エリア・スタディーズ」は、各分野の複数の専門家による共著形式が多い」なかで、著者は本書が単著になった理由をつぎのように語り、つづけて本書の全体構成についてつぎのように説明している。「これは、世界各地で華人研究のフィールドワークに40年以上取り組んできた、私の華人に対する強い思いがこもっていると解釈していただけたら幸いである」。「全52章は、「華僑・華人とチャイナタウン」「歴史」「出身地と方言集団」「経済」「政治」「社会・教育」「食文化と生活」に7つのセクションからなる」。「多くのコラムも加えた。華人社会の臨場感のようなものが少しでも伝わってほしいとの私の願いからでもある」。
これで「華僑:華人研究」の仕上げができた、と著者は思っているのではないだろうか。さぁ、これで著者は自由になった。これからは、バランスなどいろいろ配慮して書く必要もなくなった。どこか偏った研究から、神髄に到達できるのではないか、そんな期待を抱かせる。この「終活」はつぎへとつながる。
このブログ史上、もっとも短いものになったが、本書は視野が広く内容が濃く、軽く読めて深く考えることができる好著である。
評者、早瀬晋三の最近の著書・編著書
早瀬晋三『すれ違う歴史認識-戦争で歪められた歴史を糺す試み』人文書院、2022年、412頁、5800円+税、ISBN978-4-409-51091-9
早瀬晋三『東南アジアのスポーツ・ナショナリズム-SEAP GAMES/SEA GAMES 1959-2019年』めこん、2020年、383頁、4000円+税、ISBN978-4-8396-0322-9
早瀬晋三『グローバル化する靖国問題-東南アジアからの問い』岩波現代全書、2018年、224+22頁、2200円+税、ISBN978-4-00-029213-9
早瀬晋三『電子版 戦前期フィリピン在住日本人関係資料:解説、総目録』(研究資料シリーズ9)早稲田大学アジア太平洋研究センター、2023年3月、234頁。(早稲田大学リポジトリからダウンロードできるhttps://waseda.repo.nii.ac.jp/index.php?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_snippet&pn=1&count=20&order=7&lang=japanese&creator=%E6%97%A9%E7%80%AC+%E6%99%8B%E4%B8%89&page_id=13&block_id=21 )
早瀬晋三編『復刻版 南洋協会発行雑誌-『会報』・『南洋協会々報』・『南洋協会雑誌』・『南洋』-』第一期(大正期)全12巻(龍溪書舎、2021年4月~23年1月)、第2期(昭和期)電子版(龍溪書舎、2023年12月)+『南洋協会発行雑誌(『会報』・『南洋協会々報』・『南洋協会雑誌』・『南洋』1915~44年) 解説・総目録・索引(執筆者・人名・地名・事項)』(龍溪書舎、2018年1月)全2巻。
早瀬晋三編『復刻版 ボルネオ新聞』龍渓書舎、2018~19年、全13巻+『復刻版 ボルネオ新聞(1942~45年) 解題・総目録・索引(人名・地名・事項)』龍渓書舎、2019年、471頁。