日本体育・スポーツ経営学会編『スポーツ観戦を科学する-スポーツ文化のさらなる発展を目指して』大修館書店、2024年8月10日、215頁、2300円+税、ISBN978-4-469-26989-5

 本書の目的は、「あとがき」に、つぎのように書かれている。「スポーツをみる、スポーツを観戦するということに関連して、日本体育・スポーツ経営学会において蓄積されてきた研究上の知見を整理するとともに、みるスポーツについて考える際のパースペクティブ(見方や視点)を、学生、研究者、行政関係者、その他スポーツに関心のある人たちにお示ししようとするものです。同時に、スポーツ観戦の楽しみ方が多様であることや、社会の中でのスポーツ観戦の意味づけ、さらには観戦を楽しむことのできる環境づくり等々について、広く一般の方にも知っていただくことを目指しました」。

 本書は、まえがき、序章にあたる第0章、全8章、あとがきなどからなる。「本書は大きく分けて、①みる主体について(第1、3、4、5章)、②みるスポーツの生活と社会について(第2、6章)、③観戦のための環境・ハード面について(第7章)の3つから構成されています。また、概説して第0章を、まとめとして第8章の座談会を設けました」。

 第0章「「スポーツをみる」とは何か」は、「1.スポーツという文化」「2.「みるスポーツ」とは何か」「3.体育・スポーツ経営を科学する」の3節に分けて概説している。

 1.では、2011年のスポーツ基本法で「スポーツは、世界共通の人類の文化である」と冒頭で明記されてから文化として認知されたスポーツを「(1)少し前まで、スポーツは文化ではなかった?」「(2)スポーツは絵画や音楽と同じ文化である」「(3)cultureとしての文化を考える」の3つに分けて説明している。

 2.では、「(1)「みるスポーツ」と「みるスポーツライフ」」と「(2)「スポーツをみる」ことの文化的価値とは」の2つに分けて説明している。

 3.では、「(1)「科学する」とは」と「体育・スポーツ経営学がみるスポーツを科学すると、何に役立つのか」の2つに分けて説明している」。

 各章は、第8章「スポーツ観戦を科学し、未来を見通す-執筆者座談会-」の「1.はじめに:各章の紹介」で、各執筆者がつぎのように紹介している。

 「第1章は「スポーツをみる人たち」というタイトルで、スポーツ観戦する人について言及している章です」。「観戦する人たちの行動を科学的に説明しようとした理論を1つ紹介しています。それが「社会的アイデンティティ理論」という理論です」。

 「第2章「スポーツ観戦の価値とその向上」の特徴は3つあります。1点目は、スポーツ文化とは人々の生活を豊かにするものであり、スポーツ観戦を文化として内面に意味づけていくプロセスについて議論しています」。「2点目は、「みるスポーツ」の多層的な有効価値です」。「3点目は、観戦する場合の技法を提案している」。

 「第3章のタイトルは「スポーツをみる力」です。この章では、最初にスポーツ観戦に関係する力・能力というものを広く概観しています」。「スポーツを観戦しながら、それを自分の中で解釈し、スポーツ観戦の経験を自分にとって価値あるものに高めていくために必要な能力というものに注目して、それを「スポーツ観戦能力=みる力」と呼んで、その内容を詳しく解説しています」。

 「第4章では、私がずっとこだわっている「スポーツ鑑賞」という言葉と、10の能力について説明しています。最終的な主張として、ダンスやスポーツをみるための能力に名前をつけることによって、スポーツ観戦にあまり積極的でない人たちに対しても誘引をつくることができるのではないかという提案をしています」。

 「第5章は「スポーツ批評の眼差し」と題して、おもにメディア論と批評論の観点からスポーツ観戦を考察しています」。「私が競技者や解説者としてスポーツやマスメディアの現場で活動してきて思うのは、人々のスポーツの見方というものに対して、マスメディアが与える影響は非常に大きいということです」。

 「第6章は「スポーツ観戦の振興が実現する『豊かなみるスポーツライフ』」というタイトルです。スポーツ観戦というものが個人的な行為ではなくて、他者に影響を与え、まちに影響を与えるようなものだからこそ、スポーツ観戦、そしてその振興を通して、人々の生活とまちそのものを豊かにするということを実現させたいということを書いています」。

 「第7章は表題を「『みるスポーツ施設』の歴史と観戦体験」として、いわゆる建物・ハードの部分に注目したものになっています」。「建築設計を行う側からの観戦スポーツに対する認識では、観客席に関する知見があまりにも少ないという課題があります」。

 そして、本書を、「あとがき」で、つぎのようにまとめている。「本学会が関心を寄せてきたスポーツプロデュース論やスポーツ鑑賞をはじめとする幅広いトピックについての知見をもとに、みるスポーツやスポーツ観戦に関わる現代的な内容にも触れながら、スポーツ観戦を科学的にみる視点を提供することを目指してきました」。

 スポーツが熱狂的なファンのためであれば、本書のように「経営」を考える必要はない。競技者であろうが観戦者であろうが、熱狂的なファンであれば、施設や居心地はどうでもいい。だが、スポーツを文化し、科学するとなると、そうはいかない。日本体育・スポーツ経営学会が2014年に発足したのも、本書編集委員長がかつて「「観戦には審美眼が必要で、高能力者ほど質の高い観戦ができる」と豪語して」いたのを「観戦の仕方や価値観は多様であると、考えを改め」たのも、「すべての人々にはそれぞれのスポーツの楽しみ方がある」ことに気づいたからである。また、特定の種目だけでなく、多くの種目を楽しむためである。われわれはスポーツ文化人になって、スポーツを楽しむことにしよう。


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早瀬晋三『戦前期フィリピン在住日本人職業別人口の総合的研究』(研究資料シリーズ10)早稲田大学アジア太平洋研究センター、2024年3月、242+455頁。(早稲田大学リポジトリからダウンロードできるfile:///C:/Users/shaya/Downloads/KenkyuShiryoSeries_10_02.pdf)
早瀬晋三『電子版 戦前期フィリピン在住日本人関係資料:解説、総目録』(研究資料シリーズ9)早稲田大学アジア太平洋研究センター、2023年3月、234頁。(早稲田大学リポジトリからダウンロードできる https://waseda.repo.nii.ac.jp/records/78131)電子版の発行は中止。
早瀬晋三編『復刻版 南洋協会発行雑誌-『会報』・『南洋協会々報』・『南洋協会雑誌』・『南洋』-』第1期(大正期)全12巻(龍溪書舎、2021年4月~23年1月)、第2期(昭和期)電子版(龍溪書舎、2023年12月)+『南洋協会発行雑誌(『会報』・『南洋協会々報』・『南洋協会雑誌』・『南洋』1915~44年) 解説・総目録・索引(執筆者・人名・地名・事項)』(龍溪書舎、2018年1月)全2巻。
早瀬晋三編『復刻版 ボルネオ新聞』龍渓書舎、2018~19年、全13巻+『復刻版 ボルネオ新聞(1942~45年) 解題・総目録・索引(人名・地名・事項)』龍渓書舎、2019年、471頁。