デイビッド・ブラック、曽根幸子編著、有吉宏之・曽根幸子監訳、追手門学院大学オーストラリア研究所協力『西オーストラリア-日本交流史[永遠の友情に向かって]』日本評論社、2012年2月20日、391頁、3000円+税、ISBN978-4-535-58613-0
本書は、2009年に出版された英語版(David Black and Sachiko Sone, eds., An Enduring Friendship: Western Australia and Japan - Past, Present and Future)の日本語訳である(一部改稿されたものを含む)。
出版のきっかけを、発案者は、つぎのようにつぶやいている。「私[有吉宏之]は、2004年4月に在パース日本国総領事館総領事としてパースに着任しました」。「私は『日本・オーストラリア関係の歴史』という本に遭遇しましたが、もっとも失望した本でした。私の失望はこの本のなかで日本と西オーストラリアの歴史についての情報が非常に少なく、280ページの本全体のなかでわずか2ページしか記述されていなかったことでした。さらにこの本を詳細に調べると、日本と西オーストラリアの文化的、政治的、経済的関係についての資料が豊富にあるにもかかわらず、ほとんど記述されていないことに気付き、疑問をもつようになりました。このことが私をすばやい行動に誘い、日本と西オーストラリアの強い関係について述べた本を作成すべきだという結論に至」った。
そして、編著者のひとり、ブラックは本書の「内容と主題について」、つぎのように述べている。「本業を教師・歴史家とする私は、本書を刊行する目的を、日豪関係史、なかんずく日本と西オーストラリア州の関係史に一つの視座を提供することと考えています。両者関係の特定の一面や、一時期に注意を集中しすぎると、そのような視座が失われてしまうことが多いのです」。
「本書に収められた物語は、ブルーム真珠産業への日本の関わりから、第一次世界大戦における協力、1930年代から1940年代初頭にかけての友好関係の頓挫をへて、鉱物資源の開発と貿易における日本と西オーストラリア州関係の目覚ましい発展までを記述しています。ここで語られるのは、深刻な危機を乗り越えて発展してきた友情と協力の物語、いまや、教育文化交流や姉妹都市関係といった目に見える成果は両国をしっかりと結びつけている互恵関係のほんの一表出にすぎないほどしっかりと根付いた友好関係の物語です。そして、西オーストラリア州がこの物語で演じた役割は、それだけで一冊の本になるだけの重要性があります」。
本書は、6部全21章14小論からなる。第1部「遭遇 19世紀の社会経済的冒険」は5章5小論からなる。第2部「敵と味方 1919年から1950年代中期」は4章1小論からなる。第3部「戦後初期 1945年から1950年代中期」は2章からなる。第4部「鉱業開発と貿易」は3章4小論からなる。第5部「社会・文化・教育的関係」は6章4小論からなる。そして、第6部「長期的展望」は第21章の1章だけからなる。
その後、「付録 西オーストラリア州在留邦人数 1969~2007年」がある。1980年は365人、81年429人、82年504人、83年488人であったが、1996年には1952人の数倍になっている。これらの年の在留邦人数のなかに、わたしも含まれている。本書の執筆者のなかには何人か親しくした人がおり、本書中に名前だけ出てきて懐かしく思った人もいる。書かれていることのなかには、わたし自身が実体験したこともある。
こうして百数十年間の交流史を見ていくと、いろいろなことが相対化して理解できる。いいときもあれば、よくないときもあった。個々人の体験によっても、見方は変わってくる。本書は、35の章と小論からなっており、もっとも長いものでも20ページを超えていない。本格的に知りたい人は、物足りなさを感じるかもしれないが、縦横全体像を知るには便利だ。こういうものがあると、個々のテーマに深入りしやすくなる。なにより、これから交流史をつくっていく人たちが、第1歩を踏み出しやすくなる。多くの人びとが、本書の出版に尽力されているが、それだけ価値のあるものになっている。
出版のきっかけを、発案者は、つぎのようにつぶやいている。「私[有吉宏之]は、2004年4月に在パース日本国総領事館総領事としてパースに着任しました」。「私は『日本・オーストラリア関係の歴史』という本に遭遇しましたが、もっとも失望した本でした。私の失望はこの本のなかで日本と西オーストラリアの歴史についての情報が非常に少なく、280ページの本全体のなかでわずか2ページしか記述されていなかったことでした。さらにこの本を詳細に調べると、日本と西オーストラリアの文化的、政治的、経済的関係についての資料が豊富にあるにもかかわらず、ほとんど記述されていないことに気付き、疑問をもつようになりました。このことが私をすばやい行動に誘い、日本と西オーストラリアの強い関係について述べた本を作成すべきだという結論に至」った。
そして、編著者のひとり、ブラックは本書の「内容と主題について」、つぎのように述べている。「本業を教師・歴史家とする私は、本書を刊行する目的を、日豪関係史、なかんずく日本と西オーストラリア州の関係史に一つの視座を提供することと考えています。両者関係の特定の一面や、一時期に注意を集中しすぎると、そのような視座が失われてしまうことが多いのです」。
「本書に収められた物語は、ブルーム真珠産業への日本の関わりから、第一次世界大戦における協力、1930年代から1940年代初頭にかけての友好関係の頓挫をへて、鉱物資源の開発と貿易における日本と西オーストラリア州関係の目覚ましい発展までを記述しています。ここで語られるのは、深刻な危機を乗り越えて発展してきた友情と協力の物語、いまや、教育文化交流や姉妹都市関係といった目に見える成果は両国をしっかりと結びつけている互恵関係のほんの一表出にすぎないほどしっかりと根付いた友好関係の物語です。そして、西オーストラリア州がこの物語で演じた役割は、それだけで一冊の本になるだけの重要性があります」。
本書は、6部全21章14小論からなる。第1部「遭遇 19世紀の社会経済的冒険」は5章5小論からなる。第2部「敵と味方 1919年から1950年代中期」は4章1小論からなる。第3部「戦後初期 1945年から1950年代中期」は2章からなる。第4部「鉱業開発と貿易」は3章4小論からなる。第5部「社会・文化・教育的関係」は6章4小論からなる。そして、第6部「長期的展望」は第21章の1章だけからなる。
その後、「付録 西オーストラリア州在留邦人数 1969~2007年」がある。1980年は365人、81年429人、82年504人、83年488人であったが、1996年には1952人の数倍になっている。これらの年の在留邦人数のなかに、わたしも含まれている。本書の執筆者のなかには何人か親しくした人がおり、本書中に名前だけ出てきて懐かしく思った人もいる。書かれていることのなかには、わたし自身が実体験したこともある。
こうして百数十年間の交流史を見ていくと、いろいろなことが相対化して理解できる。いいときもあれば、よくないときもあった。個々人の体験によっても、見方は変わってくる。本書は、35の章と小論からなっており、もっとも長いものでも20ページを超えていない。本格的に知りたい人は、物足りなさを感じるかもしれないが、縦横全体像を知るには便利だ。こういうものがあると、個々のテーマに深入りしやすくなる。なにより、これから交流史をつくっていく人たちが、第1歩を踏み出しやすくなる。多くの人びとが、本書の出版に尽力されているが、それだけ価値のあるものになっている。
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